駅の自殺防止ポスターにクレーム?自死遺族の感じる痛みが波紋

名鉄、駅のホーム

2017年7月20日、JR東海地区の駅に掲示中の自殺防止ポスターが波紋を広げているというニュースが報じられていました。

駅の自殺防止ポスターには『STOP自殺』というスローガンの元、「みんなで守ろう!大切な『いのち』」というコピーが記され、その下に「鉄道での自殺は、大切な命が失われるだけでなく、鉄道を利用する多くのひとの安全や暮らしに関わってきます。もし悩んでいるひとを見かけたら、勇気を持って声かけを」という文言が入っています。

しかし、13日に行われた名古屋自殺対策連絡協議会において、遺族の自助グループ『リメンバー名古屋自死遺族の会』の代表であり、幹事の花井幸二さん(50)が、「身近な自死を防げず、自責の念に駆られている遺族をさらに追い込む」とクレーム。

これがたちまち、世間で波紋を呼ぶことになったのです。

自殺は非常にデリケートで難しい問題で、命を絶った当人はそこで終わりを迎えられるかもしれませんが、残された遺族によってはそこから自責の念で苦しむ人も少なくないと言われています。

今回はこの問題について詳しくみていきましょう。

Sponsored Link

駅の自殺防止ポスターへのクレームが波紋

今回、東海地区441駅で使用された自殺防止ポスターが、遺族を傷つける恐れがあると一部の有識者からクレームが寄せられたことが波紋を呼んでいます。

まずは、駅で貼られていた自殺防止ポスターを見てみましょう。

東海地区の駅に貼られていた自殺防止ポスター

一見、何も問題がなさそうな自殺防止ポスターですが、クレームがついたのは以下の文言。

「鉄道での自殺は、大切な命が失われるだけでなく、鉄道を利用する多くのひとの安全や暮らしに関わってきます」

この一文が自殺者の遺族を苦しめることになるとの指摘したのが、『リメンバー名古屋自死遺族の会』の代表・花井幸二さん(50)で、おそらくこのポスターの文言が「自殺は迷惑である」という意味に取られる可能性があり、自死遺族への配慮が欠けているということなのでしょう。

たしかに、この文言を「自殺は迷惑だからやめましょう」と意訳すれば、自殺の本質がまったく見えていないことになります。自殺を考えている人に対して、「自殺は人の迷惑になるからしちゃダメだよ」という答えが不正解であることは、少し考えれば誰だって分かることだからです。

しかし、駅で貼られた自殺防止ポスターを見て、そのように捉えた人が少数派だったことは、今回のようにこのニュースが波紋を広げていることからも見て取れますが、花井幸二さんはさらに次のような問題点も指摘しています。

「『世間に迷惑をかけるから(自殺を)やめよう』と当事者が考えるだろうか?」

このように、駅での自殺防止ポスターへの効果についても疑問を呈しており、本質的にポスターの内容が間違っていると考えているようです。

駅の自殺防止ポスターには効果がない?

人身事故による鉄道のお知らせ

今回、東海地区の鉄道駅に貼られた駅の自殺防止ポスターの効果については、一定期間設置した後の経過を見てみないとなんとも言えませんが、『リメンバー名古屋自死遺族の会』の代表の1人である花井幸二さんは、このポスターについての効果には疑問を持っているとのこと。

ポスターは名鉄、JR東海、近鉄、名古屋市営地下鉄などが共同で制作したものですが、通常、ポスターのコピーは色々と検討された上で掲載されるものなので、決していい加減に作られたものではないはず。

たとえば、ポスター制作を呼びかけた名鉄では年間20~30件の鉄道への投身があり、その度に遅延や事故処理、業務への支障による損害が発生しているそうです。当然、公共の交通機関なので、多くの利用者から苦情も受けることにもなりますし、職員は通常業務以外の仕事に追われることになるでしょう。

鉄道会社からすると、その一文にこそ込められた思いがあるはずなので、今回の有識者会でのクレームを受けた挙句、効果がないとまで言われてしまうのは、少し不憫に思います。

遺族と鉄道会社、きっとどちらも可哀想だし、お互いが違う苦しみを抱えているとは思うのですが、自殺防止ポスターはこれ以上自死遺族を増やさないために作られたものなので、あまりお互いが敏感に反応しないほうが今後のためにはいいのかもしれません。責めるべきは、遺族でも、鉄道会社でもないことは私たちもわかっていることなので、これ以上、自殺を選択する人が減るような建設的な話をしなければ、まったく本末転倒な話になってしまいます

『鉄道での自殺は、鉄道を利用する多くの人の安全や暮らしに関わってきます』

しかし、その後には『もし悩んでいる人を見かけたら、勇気を持って声かけを』という言葉で締められているので、そのままの意味で捉えるなら、自殺しようとしている本人だけではなく、第三者への問題提起の意図が強く感じられます。これは普段、鉄道利用する社会の人々への問いかけであり、悩みを抱えた人への関心を持つことで自殺を抑止する目的があると考えた方が自然でしょう。

実際、この自殺防止ポスターでどのような効果が得られるかどうかはわかりませんが、ふと誰かが思い当たる節があって、悩みを抱えた人の手助けになるキッカケになる可能性は秘めています。

名鉄だけで、毎月かならず1度2度のペースで自殺者がでている状況と、駅の利用者数を考えれば、効果がないと言い切ってしまうのはすこし尚早のように思えます。

Sponsored Link

自死遺族の感じる痛みとは?

年間3万人の自殺者がいると言われている日本では、自殺は大きな社会問題です。

私自身の話ですが、40年以上生きていると、身近な人が自ら死を選んだという知らせを聞くこともあります。そして、遺族やその友人・知人の多くは、まったく予期できなかったと答えます。

以前、『自殺って言えなかった。 (サンマーク文庫)』を読んだ時、多くの自死遺児たちは「親が死んだのは自分の責任」だと感じていることを知りました。おそらく、自殺したのが自分の子供だったとしても、親はきっと自分を責めるでしょう。

他人は「あなたは何も悪くないよ」と言ってくれます。しかし、「あの時こうしていれば…」「様子が変だとわかっていたのに…」と、過去の自分の行動を許すことができずに、ずっと後悔の念が残ってしまうのです。

『リメンバー名古屋自死遺族の会』も、自死遺族が他人には吐き出せない苦しみを分かち合える場所であることから、その悩みがどれほど深いものか察することができます。一般の人が駅の自殺防止ポスターを見て感じないようなことも、自死遺族からするとデリケートに感じ取ってしまうことがあることを忘れてはいけないのかもしれませんね。

ネットなどをしていると、時々、FXなどの投資で莫大なロスカットを受け、電車に飛び込むと宣言する冗談とも本当ともとれないような書き込みがあったりしますが、実際によく名前の挙がる東京のある駅では、ホームドアを設置して自殺防止の成果を上げたという実例もありました。

ホームドアホームドア(イメージ)

駅での安全を守るために、ホームドアの設置は非常に効果があるのですが、多くの場合は予算の関係上、まずはポスターで抑制を図る活動から始めなければならないのが実情です。今回、東海地区での駅の自殺防止ポスターが波紋を広げることとなりましたが、結局のところ、すべての人を納得するコピーなどありません

【関連記事】
本田圭佑が自殺についてツイッターで持論!炎上する理由とは?

まとめに入りますが、駅ホームから身を投げた人がいて、それで迷惑を被った人がいたとしても、遺族を責める人はおそらく誰もいないでしょう。遺族は遺族で、自責の念が簡単に拭い去れるものではなく、人によっては一生を通して苦しむこともあります。

ただ、駅で不幸が起きる度、鉄道関係者も苦しみ、トラウマを抱えることになるのです。

今回のニュースは、自ら死を選ぶことで、周りに苦しみが伝染することを知る良い機会になったかもしれません。

お互いがこれ以上自殺者を増やさないことを願っているのですから、理解ある形で歩みより、優しい社会形成を築く糧になればいいと願うばかりです。

Sponsored Link

コメントを残す

このページの先頭へ